部分 痩せを手軽に共有できる

女性がダイエットなどでやせるためには、月経周期も考慮した計画が必要になるのかもしれない。ただ、まだ研究が不十分で、はっきりしたことはわからない。
レプチンを動物に与えると、食欲がおち、やせてしまうことは確かだ。そのため、「夢のやせ薬」の第一候補ともいわれているのである。
大脳の中央部分には、視床下部とよばれる場所がある。ここは自律神経の最高中枢で、呼吸、体温調節、性行動など、人が生きていくための重要なコントロールを行っていることが昔から知られていた。
動物実験で視床下部の一部分を破壊すると、食欲がまったくなくなるという変化がおこり、
少し離れた場所を破壊すると、今度はかぎりなく食べつづけるようになく、肥満になってしまう。この実験から、大脳の視床下部には、摂食中枢と満腹中枢が共に存在していることもわかったのである。
この両中枢には、血糖などの物質を信号としてうけとめる受容体があり、その濃度が低下すると、「お腹がすいた」という感覚が生じる。レプチンも、中枢に情報をつたえる物質の一つとして働き、食欲をおさえる感覚を生じさせるのである。
興味深いことに脂肪細胞は、レプチンがふえると逆に減少するという物質もっている。
アディポネクチンといい、やはりホルモンの一種である。ちなみにアディポは「脂肪の」という意味である。
脂肪細胞だけがこの物質をもっていることから、肥満との関係が大いに気になるところで
ある。体内には情報をつたえるための物質がたくさん存在するが、普通は種類の異なるさまざまな細胞でつくられている。アディポネクチンのように、同じ種類の細胞でしかつくられていないという状況自体が、きわめて特殊といえる。
レプチンは脂肪細胞の数に比例してふえることをすでにのべた。ところがアディポネクチンの方は、逆に脂肪細胞がふえると、血液中の量が減少してしまう。なぜこのような現象がおこるのか、そして体内でどんな働きをしているのかなど、詳しいことはまだわかっていない。
いろいろな病気になると、血液中のアディポネクチン量が減少することが確かめられており、特に糖尿病や動脈硬化症の人では明らかに減少している。アディポネクチンは、血管内で異変がおこると、内皮細胞にもぐりこんで何かの働きをするらしい。
しかし、この物質が糖尿病などの病気をふせぐ働きをしているのか、あるいは病気の結果として減少するのかは、まだわかっていない。
最近、このアディポネクチンに血糖値を下げる作用があることもわかってきた。ということは、病気をふせぐ方向で働いているということになる。また、日本人にはアディポネクチンをあまりつくらない体質の人が多いこともわかってきた。そうだとすれば、同じように糖分をとっていても、欧米人より日本人の方が病気になりやすいことになってしまう。
ここまで、肥満がおこる仕組みについていろいろ考えてきた。肥満には、食事の影響はもちろん、遺伝的な体質も大いに関係している。肥満は、両者があいまっておこるものなのである。
理想的でない理想体重肥満の程度を数字であらわすことができれば便利である。しかしその定義が意外と難しく、どのようにきめても何らかの不都合が生じてしまう。たとえば昔から使われてきた「理想体重を求める式」に、次のようなものがある。身長から七〇〇を引き算し、〇・九をかけるという方法である。かくに身長一六〇センチメートルの人では、
(一六〇センチメートル―七〇〇)×〇・九という計算から、五四キログラムとなる。ただし身長が一五〇センチメートル以下の場合、〇・九をかけ算しない約束になっている。
この式で求めた理想体重は、糖尿病、高血圧症、高脂血症などの食事療法で広く利用されてきた。たとえば糖尿病があり、身長一六〇センチメートル、体重八〇キログラムという人を例に考えてみたい。先ほどの計算から理想体重は五四キログラムとなく、かなりの肥満であることがわかる。
そこでカロリー制限を行うことになる。この人の仕事がデスクワークとすれば、一日に消費するエネルギーは、体重一キログラムあたり二五⊥二〇キロカロリーほどになることがわかっている。したがって、減量して理想体重を維持するには、一日一三五〇〜一六二〇キロカロリーに制限すればよいことがわかる。
このように、理想体重は簡単に計算でき、かつわかくやすい指標でもあったことから、広く使われてきたのである。
この理想体重から、肥満度を求めることもできる。自分の体重から理想体重を引き算し、それをあらためて理想体重で割り算して、最後に一〇〇倍するのである。前述の身長一六〇センチメートル、体重八〇キログラムの人では、約四八パーセントとなる。
ただし、この方法には問題が一つあった。
昔から使われてきたわりに、計算式の根拠があまりはっきりしていなかったのである。
最近になって、これにかわる新しい指標が世界的に普及した。通常、頭文字をとってBM
I(ビー・エム・アイ)という。
考え方の基本は以下のようなものである。
肥満の程度は、単純に身長と体重の比だけで決まるのではなく、補正したものが必要となる。たとえば身長に二倍の差がある二人をくらべてみたい。このとき、体重も二倍であれば肥満の程度は同じと判断してよいだろうか。
このとき、両者の体重をそれぞれ身長の二乗(身長×身長)で割り算すると、同じ値になる。
これがBMIなのである。あらためて式であらわせば、
BMI=体重/(身長×身長)となる。
実際には、それぞれ体重をキログラム、身長をメートルであらわして計算することになっている。たとえば、体重五六キログラム、身長一六〇センチメートルであれば、端数を四捨五入し二二としてもよい。
ここで、読者の方にも、自分のBMIを求めておいていただきたい。
もちろん方法だけ新しくなっても、理想的な値がどれくらいなのかがはっきりしなければ意味がない。BMIの理想値はどれくらいなのであろうか。
最近、「日本人のBMIの理想値は二二」といわれるようになった。逆算すると、たとえば
身長が一六〇センチメートルの人の理想個は、五六キログラムほどになる。なぜ理想値かといえば、いろいろなBMI値について日本人の健康状態を調べたところ、これくらいの債で一番良かったから、ということらしい。
そこで、根拠となったデータを少し検証しておきたい。三〇〇〇人をこえる男女を対象に、
BMIとともに血圧、尿、血液、胸部レントゲン、胃のレントゲン、心電図などの検査が行われたのである。血液検査では、肝臓病、腎臓病、高脂血症、糖尿病、痛風などの分析が行われた。これらの項目の一つひとつについて、異常があれば一ポイントを加算する、という方式で各人の健康状態が点数化され、最後に総合ボイントがBMIと比較された。その結果、男女ともBMIが二二くらいで、もっとも良かったのだという。
話としては大変わかくやすいが、問題がないわけではない。各人の検査値を一回ずつ調べただけで、ほんとうに健康で長生きをしたかどうかが調査されていないのである。検査値は良くとも、寿命が長いとはかぎらない。真の理想値を求めるには、長い年月をかけた追跡調査がやはり必要だろう。
この間題は、本書の重要なテーマでもあることから、あとでまた詳しく考えることにしたい。

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